専門家の方が遅れているという事実
かつて、知識が力だと言われていた時代がありました。knowledge is powerといっていた時代です。
でも今は違います。情報、知識は力ではありません。理由は、誰でも情報にアクセスできるようになってしまったからですね。
昔はインターネットとかなかったので、情報や知識へのアクセスが制限されていました。
そのため、それを持っているだけで力でした。しかし、今はGoogleを叩けば、どれだけの情報が出てくるでしょうか?このように、誰でも簡単に情報にアクセスできるようになりました。
知識があふれ返った今の状況の中で、知識は力ではありません。
例えば、 専門家が一般人より情報の更新が遅れている という、ちょっと面白い現象が、あらゆるところで起こっています。
二・三年前のことですが、うちの奥さんがインドに一カ月くらい、修行に行くと言って出かけて、腸チフスになって帰ってきたことがありました。
丸一カ月、四十度ぐらいの熱が出て下がらず、当然入院したものの、最初は原因がわからなかったので、みるみるうちにまるで骨と皮しかないくらい痩せてしまったことがありました。
彼女はUCLAのバイオロジー出身で、医者を目指していたので、自分が合わない薬があることを知っているので、医者から与えられる薬に関しては、かなり過敏になっていました。
そんな生死をさまよっているような状態で、ベッドの上で、処方された薬をiPhoneで調べるわけです。そうすると、この薬は最近認可がおりた新薬とか、どういう副作用の可能性があるのかということは全部出ているわけじゃないですか。
医者はそんなところまで全部見ません。新薬を試したい一心で処方しています。
そしてまた、自分が知っているものがすべてであり最高、最新だという思い込みですね。
そこで彼女は、医者とさんざん喧嘩して、私の合う薬の系統はこっちだから、これ持ってこいとかという話になりました。医者は、自分が得意分野でいつも使っているものは知っていますけど、そこまで網羅はしていません。
だから情報の更新が遅れているのです。 思い込みの怖さ とも言えます。
私がITの会社でセールスをやっていたときも、お客さんのほうがいろんなものを調べてよく知っていました。
お客さんの方は、自分は買う側だから、悪いものをつかみたくないし、いいものの情報をいろいろ集めてきます。
今はインターネットで調べると、比較サイトがいっぱいありますよね。
だけど、ITの業者側は、自分の売っている商品に関してはよく知っているけど、ごまんとあるライバルのものを比較して、何がいい、何が悪い、世の中にどんなものが出ているということを全部調べている余裕なんてもちろんありません。
営業成績を上げなきゃいけなくて、すごく忙しいですから。
そうすると、お客さんに教えられるのです。
「え、そんなのあるんだ、知らなかった」ということがよく起こっていました。
本当に今の社会の面白い特徴ですね。専門家なのに、一般人より遅れているという点では、とくに情報というものが、象徴的なことだと思うのです。
知識は道具。じゃあそれをどう使う?
重要なところはここからです。では、知識とは一体何なのでしょうか。力ではありません。
知識は道具です。 「道具」と聞いて思い出すものはいろいろありますが、例えばトンカチ。知識はそれと同じです。
例えば、ノウハウとかも道具ですので、その道具を使いこなせるかどうかが重要なポイントです。
そこでトンカチを例に挙げますが、同じ道具を使うにしても、プロの大工さんなら決まったところに釘を打ちつけていくことはできますが、素人にはできません。
タイガー・ウッズと同じゴルフクラブを持って、タイガー・ウッズと同じプレーができますか?ということですね。
これは道具の持っている特質で、道具を使いこなす技術があるかないか、です。
このように、知識はただの道具なんです。この道具を使いこなす技術があるかどうか?ということです。
道具はいっぱい持っていてもしかたがありません。とくに、自分が目指している目標に対して使える道具は、たくさん持っていても仕方がないのです。
それよりも、一つのものをしっかり使いこなしていくことの方が重要です。
そうなると、知識を同じ観点で見たとして、 99%の知識は有害 だと思ったほうがいいです。知識は有害で、惑わすのです。これは面白い観点です。
情報化社会特有の害で、あの人はああ言っている、こっちの人はこうだと、どんどん自分が見えなくなっていきます。
そうなると、正しい、自分のためのたった1%の情報をどうやって嗅ぎ分けたらいいのでしょうか?
自分の中を探せといっても、これはなかなか難しいので、まずはモデリングをし、「誰から聞くか」ということが一番重要になります。
既に達成して、それを体現して生きている人をモデリングします。
しかし、気をつけてほしいのは自分より少しだけ先を行っている人は、同じ方向に進んでいく仲間にはなりますが、モデルにはなりません。
だから自分の軸をどこに持っていくかということです。
さて、あなたは今、あなたが持つその知識をどれだけ道具として使うことができるでしょう?
そして、あなたがモデリングしたい方はいますか?
ちょっと、考えてみてくださいね。
本多遊里子 【ライター】
WEBライティング、サブカル雑誌などのライティングを経て電子書籍の執筆多数。現在はRCF出版の電子書籍編集に携わっている。